なこ編 episode 3
入園説明会
まだ息が切れてます。ようやく入園グッズとの格闘が終わりそうです。
思えば長い道のりでした。１１月，個人面接を大泣きで拒絶したにも関わらず入園許可。１２月，園服の採寸。そして３月，ついに「入園グッズ説明会と物品の購入」がやってきました。
当日は土曜日。しょうをだんなさんに預けてお留守番という案もあったけど，だんなさんは一度も笛吹き幼稚園を見たことが無く，おまけにしょうは幼稚園に行きたい・・・という訳で家族総出で出掛けました。土曜日は半日保育。だから在園児のイベントに新入園児を混ぜ，その間に保護者がいろいろ説明を受けるという段取りになる。
まず受付。「お名前，教えてくれるかな？」という優しい先生の問いに「かわかみぃなこちゃんです」と答える。よし，ＯＫ。それから空席を探して座る。なことしょうは，部屋の隅にあるおもちゃで遊びだす。またままごとしてるよ。好きだねぇ，もう。
なこちゃんは，前回の失態をまた繰り返すのかというむるっちの心配を振り払うかのように，先生の指示に従って保護者控え室から皆と退室。一安心・・・のはずが，おまけの弟・しょうが「しょーたんもいくー」とついて行こうとする。もうやめてよ，としょうを抱いて，なこを見送る。あー，ホールに入っていった。大丈夫，戻ってこないよ。でも，残されたしょうは口を「へ」の字にして，今にも泣きそう。小声で「しょーたんもいきたいのにぃ・・・ふぇぇぇ」って。
さ，園服・学用品の支給とお金の納入。
ま，大人のことだから，その辺はスムーズに行く訳。でも，予想外に物品が多いのでちょっと驚いた。カバン・帽子（夏・冬）・園服（夏・冬）・体操服（夏・冬）・スモック・上履き・上履き入れ・園章・防災頭巾・絵具・筆・クレヨン・粘土板・粘土ケース・のり・はさみ・文具入れ等々。総額４万４千円弱。それでも安い方だと思うよ。
納入の順番を待っている間に，涙目のなこが先生に手を引かれて戻ってきた。そういう子は何人も居たけど，それぞれが親に説得されてホールに戻っていく。なこを説得するのはむるっちなのだけど（とうちゃんはしょうを看てたからね），そううまく説得できる訳がない。
「Ｒくんがあそこにあるでしょ？ Ｒくんが居れば，お母さんもお父さんもあっちで先生のお話を聞いてるってことだから，大丈夫。置いていかないよ。先生のお話聞かなくちゃ。なこちゃんが幼稚園に行く準備ができないからね」
「いい，お母さんとこで先生のお話聞く方がいい」
「劇見るの楽しいよ。お兄ちゃんたち笑ってたでしょ？ しょうちゃんが行きたいって泣いてたから，じゃぁなこちゃんの代わりにしょうちゃんを行かせようか」
「うん，それでいい・・・」
そんな話をしながらホールへ連れて行き，カーテンの隙間から先生に預ける。「さ，なこちゃん始まるよ。済んだらお母さんが迎えにくるから大丈夫だよ」なんて言ってる。すいませんって頭を下げて・・・。ちょっと会場を覗いた感じでは，始まる前から在園児の熱気むんむん。私も見たいなぁ・・・なんて思いながら，スリッパをパタパタ言わせてダッシュで説明会会場へ戻る。保護者ってつまんないなぁ。
むるっちが戻る途中で子供を抱いたお母さん数人とすれ違う。あぁ，うちだけじゃないっていう妙な安心感が湧く。
それから，入園についての説明が始まる。
もちろん，最初は幼稚園の時間割や，登園させる際の諸注意から。「慣れないうちは泣くけれど大丈夫ですから預けてください」「おもらしなどの心配はしなくてもいいです」「○○したら幼稚園で叱られるなどと，幼稚園に対する恐怖感は植えないでください」とか。
説明を聞いていると，窓の向こうに見慣れた我が子の姿が。しかも先生に抱かれてる。（あぁ，やっぱりだめだったか。さっきは簡単に先生に抱かれてホールに消えたのになぁ。まいったなぁ。）なんて思いつつ外を見ていると，どうも様子がおかしい。こっちへ来ない。だんなにそう言うと「じゃ，いいよ。話聞いてれば？」。そうだよねぇ，来ないうちからやきもきしても仕方ないよ。うん。でもやっぱり気になるから，見ちゃうんだよね。しばらく見ているうちに，なこが先生に抱かれて世間話をしているらしいのに気づいた。あぁ，そう来たか。でも，ま，この様子ならいいでしょ。
（おぉ，脱走してる子がいる。先生がなこを抱いたまま追いかける。捕まえる。あぁ・・・先生ひとりで３人か。大変だぁ。迎えに行こうかな。あ，援護射撃。じゃ，いいか。）なんて思いながら前に向き直る。
さてさて。むるっちが一番気に掛けていた「手作り入園グッズ」の説明が始まった。これをしっかり聞きたかったから，しょうをだんなに見ててもらうことにしたんだよね。あらかじめ配られた「入園のしおり」を見つつ，先生が提示する見本を見つつ，一生懸命メモをとる。
通園カバンに入らないものを入れる手提げカバン，体操着を入れる袋，歯磨きセットを入れる袋，防災頭巾をしまっておく座布団カバーなどなど，袋物が７点。園児共通のスモックに本人に分かるアップリケ。お手拭タオル（ひっかけておくためのループを付ける。でもついてるものが市販されてる）。雑巾。体操着には大きく名前を書いたゼッケン。学用品・衣類にはひとつひとつ名前を書く。結構，いろいろ準備があるのね。
ま，ともかく。説明があらかた済んだところでふと我に帰り，だんなに「なこのその後」を尋ねたら，彼はあっさり「後ろでままごとしてるよ。だから，しょうもあっちに行ったの」と答える。「気にしなくても，なんとかなるよ」なんて言ってる。（あんたの言ってることは分かるけど心配なの！）と心の中で叫んでみる。でも今は物品が揃っているか確認作業中。ままごとしている人たちのことは置いておこう。
確認・返品などが済み，説明も終わったところで子供たちのご帰還。まぁ，うちのはその前に帰ってきてたけどね。「みんな，楽しかったかな？」という園長先生の問いに「はーい」なんてみんなでお返事。一番声の大きい女の子，なこちゃんと前後して帰ってきてたでしょ？ 見てたわよ。
「さくら。ちゅーりっぷ。たんぽぽ。これから色々なお花が咲きます。そうしたらまた幼稚園へ来てください。待ってますね。それじゃ，先生さよーなら，みなさん，さよーなら」とご挨拶。はい。これで，本日の大イベント全て終了。
頭がくらくらするよ。もう。なこは泣いて戻ってくる。しょうは行けなくて愚図る。むるっちには入園グッズ作りが・・・あぁ。どうしよう。
帰宅して昼食をとると，子供たちはすぐに昼寝。緊張が解けたのか，爆睡してる。その間に必要なものリストを作る。新しいパンツ・靴下はもちろん，箸，コップの他，袋類製作に必要なものを買いに行かなきゃ。さて。ここで大きな問題が生じる。字の読めないなこに理解できる，しかも他の園児と違う「マーク」を付けるには何をどうしたらいいのか。うーん。やっぱ，キティちゃんのアップリケかな？
布地は数ヶ月前に「どうせ必要だから」とたんまり購入してある。
あとは「なこ印」に使うアップリケ・ゼッケン用布地をまとめて買えば・・・と手芸センターへ出掛けたのが大間違い。
アップリケ売り場は修羅場。殺気立っててねぇ，怖かったよ。
「○○くん，ピカチューがいいの？ もう聞くたびに変わるんだもん。これじゃ買えないわ」って怒ってるお母さん。兄弟で走り回ってる子供を探すお母さん。手に「入園のしおり」とペンを持ち，指差し確認しながら購入してるお母さん。所在なさ気に邪魔なとこに立ってるお父さん。
むるっちはしょうを抱いて（なこはだんなと別の場所で遊んでた）買い物しようと思ったけど，アップリケだけは断念したよ。１）まずそのエリアに入れない，２）どんなに種類が豊富でも，ここで買うからには誰かと同じアップリケになる可能性が高い，３）それになこは「どうしてもこれ！」という大好きなキャラクターがない，４）それに出来上がってるアップリケは高価すぎ。だから買わない！
なこじゃなくて，しょうを連れててよかったと思った。あんな殺気立ったアップリケ売り場になこを連れてったら，「ぜったい買うー」ってむるっちの意図を無視して一枚ずつ数種類をねだられたね。しょうは当事者じゃないから気楽なもので，「あー，これ，うちのとおんなじじゃ，なぁい？ おかーさん」なんてアンパンマンを見て喜んでる。
なんとか必要なものを購入して，だんなと落ち合い，軽めの夕食。本当はそれからタオルやパンツやコップなんかを買うつもりだったんだけど，アップリケ売り場でエネルギー吸われちゃって・・・そのまま帰宅。残りは翌日に繰越。
翌日，子供ふたりをだんなに預けてお買い物。ひとりで買い物なのに，手にメモを持ってると全然優雅じゃないのはどうしてかねぇ。買い残したものを一通り揃えて帰宅。早速製作に取り掛かる。まずはデザイン・・・あぁ，頭が働かない。
こうして最初の週末は終わったのだった。
とりあえず形だけでも・・・と，アップリケはそっちのけで布地を裁断し，ぐしぐし手縫いする。むるっちは「ちまちま」した仕事は嫌いじゃない。だけど中学・高校と家庭科は５段階評価で「２」と「４」（しかも４は６年間で一度だけ）しかもらったことのない女。「下手の横好き」な上に，手が遅い・・・あぁ，３月後半から帰省するのに，本当にそれまでに出来るのか？ すっごい不安。おまけにむるっちの体調不良，頭痛が治らない。しょうの「しょーたんのはどれー？」攻撃（これをかわすためには全て２つずつ作る必要がある。２歳児にそれが分かるか？と思うあなたは甘い。親の知らない間に，なこが並べて確認するのさ。ほら一目瞭然・・・）。
むるっちがぐしぐし手縫いする傍らで，なこが一緒に裁縫をする。まぁ，あまり布をぐちゃぐちゃと縫うだけなんだけど。ふたりで並んで裁縫しながら「なこちゃんマーク，どうしようか？」なんて相談にならない相談をしていて，出た結論。
大きな袋には「なこちゃんの顔（ＨＰに載ってる顔）」をフェルトでアップリケする，これに決定。小さな袋は用途に応じてアップリケをつけるってことになった（コップ袋にはコップのアップリケってね）。
でも，あくまでも下手の横好き。仕事が進まない。そこへばあちゃんの登場。「こんな色の糸で縫って・・・」とか「ここはこうすれば・・・」なんてチェックも入ったけど，さすがはばあちゃん。上手いことやってくんだよねぇ。家庭科の宿題を代わりに作ってもらったときよりも，ずーっと有り難かったのはどうした訳でしょう。
そして一週間経過。なんとか目途がついたよ。あと，もうひとふんばり。途中「もう，どうでもいい！」って投げやりな字でゼッケンに名前を書いたりしたけど，アップリケ付けてて「どうせ自己満足じゃん。私が頑張ったって，子供にわかんなきゃ意味ないんだよ」なんて一人毒づいたこともあったけど，もうすぐ終わり。あーよかったよかった。
入園グッズが揃う前は「間に合うかどうか」がすごく心配で，それがクリアできたらリラックスして入園が迎えられるって思ったけど，今は今で「入園式でなこが泣いたらどうしよう」って・・・あー，心配の種はつきないよ。
そうそう。なこちゃんの幼稚園（先生）ごっこに変化が現れました。今までは「さぁ，お歌を歌いましょう」とかしょうに指示を出してただけなのに，先日の体験保育を境に「しょうちゃん逃げて。なこが捕まえに行くから」って。幼稚園の先生は鬼ごっこをしていた訳じゃないのにねぇ。大きな誤解が生じてます。
入園グッズが揃ったからゴールじゃなくて，ようやくスタートラインに立つんだよねぇ。どうかなこちゃんが早く幼稚園に慣れますように。楽しく園生活が送れますように。そう願うむるっちの胸に「慣れたら，それはそれで大変かも・・・」という不安が新たに芽生えたのは何でですかね？