雨上がり

　昨日さぁ，すっごい雨降ったじゃん。そのせいで，もうとんでもない目に合っちゃったよぉ。ほんと，びっくりしたんだからぁ。

　今朝ね，通学路を歩いてたの。そうそう，集合場所からすぐの山ん中の道，うん，あの細いところ。あそこって，狭いから車って通らんじゃん。だもんで，あのへんっていつも学校へ行く前の遊び場みたいなもんじゃんねぇ。

　そいでさぁ。今朝，そう今朝。なんかバレーボールみたいなのが一個だけ落ちてたのよ。白くて真ん丸くて，あ，もちろん昨日の夜中に雨降ったせいでずいぶん汚れてたけど。ほんとにバレーボールみたいだったんだけど，線っていうのかなぁ，あの接ぎ目がなくて。もうつるつるって感じだったの。

　そういうのがあったら，蹴りたくならん？　私？　そう，蹴ったんだわ。それが「ぼこっ」って感じで凹むんだわ。ボールだったら転がったり，跳ねたりするじゃん。もう全然そんなことなくてさぁ。石かなぁ，それとも大きいきのこかなぁって思ったんだけど。で，それが，よく見ると土に埋まってるんだけど，結構たくさん落ちてるんだわ。それを足で掘り出して，「ぼこっ」ってやって遊んでたの。割と深く埋まってるんで，掘るのに時間は掛かったけど，長靴だったもんで汚れてもいいやって思ってさ。だから，あんまりたくさん蹴った訳じゃないんだわ。

　で，まぁ，足で掘って蹴って... ってやってたら，置いた場所が悪かったみたいでさ，「ころころ」って転がってったの。途中の石で引っかかって止まったんだけど，なんか丸い穴が二つ空いてるんだわ。おかしいな，蹴ってないのに... って思って「じいっ」と見たんだわ。そしたらさぁ，何だったと思う？　見覚えがあるんだけど，実物見たのは初めてだったんだわ。

　それねぇ，頭蓋骨だったのよ。通学路の上の方に土葬する場所があるのは知ってたけど，まさか崩れて落ちてくるなんて思わんじゃん。そう，ぼこぼこ蹴ってたのはぜ～んぶ頭蓋骨だったってわけ。もう罰が当たるかと思ってあわてて逃げたよぉ。もちろん学校の方へ... だけど。

　学校へ着いてからは，なんだか忘れててなんともなかったんだけど，帰りも同じ道を通って帰らなくちゃならないんだけど，もう恐くてさぁ。自分の蹴った頭蓋骨がこっち向いて私を待ってたらどうしようかって思うよねぇ。でも，全然そんなことなかった，あるわけないじゃんね。怪談でもあるまいしね。