あぁ，勘違い

　子どもの頃というのは，大人の嘘に惑わされるだけではなく，とかく「勘違い」したまま生活するものである。今回は「むるっちさん大人になる・番外編」として，むるっちさんの知人のおかしな勘違いを紹介しておきたい。

｢赤い靴｣

　「赤い靴，はいてた女の子・・・」という歌い出しの童謡『赤い靴』。物悲しい曲調の曲であるが，なぜか勘違いが多い曲の１曲である。

　私は「異人さんに連れられて」というフレーズを「ひいじいさんに連れられて」と勘違いしていたのだった。「異人」の意味がわからなかったというのが最大の原因であろうが，「ひいじいさんに連れられて」一体何処へ行くというのか。

　しかし，世の中は結構広いものである。「ひいじいさん」どころか，「きりんさん」だと思っていた人もいる。「赤い靴，はいてた女の子，きりんさんに連れられて行っちゃった」なのである。「きりんさん」が一体何処へ連れて行くというのだろうか。彼女の頭の中にはきっとメルヘンの世界が広がっていたのだろう。
　それは「アフリカ」だろうか，「動物園」だろうか。私の頭の中にも果てしない想像が広がっていったのだった。

「怪物くん」

　私が小学生の頃にはテレビで「怪物くん」というアニメを放映していた。藤子不二雄作品である。たしかオープニングだったと思う。「念力集中，ピキピキドカーン，たちまちおつむが大噴火」というフレーズがあった。
　私の幼い従妹がその曲を歌うのだが，なぜか「おむつが大噴火」なのである。私と弟は彼女が一生懸命歌うのを聞きながらも吹き出してしまった。当時彼女は入園前の幼児であった。この頃の子どもというのは「メタテイシス」がお得意である。
　「おむつ」が噴火するとは，よほどの事態なのではないか。私と弟の頭の中では，つい最近まで「おむつ」をしていた彼女の姿と重なってしまっていた。今となっては，その彼女もカラオケで trf を歌うまでに成長したが，当時の十八番が「怪物くん」と「銭形平次」だった事を思いだすと非常に感慨深いのである。

「ジングル・ベル」

　ある日，私は友人と上述の「赤い靴」の勘違いについて話をしていた。そこで，友人が話してくれたことである。
　彼女は昔，なぜか「ジングル・ベル」のサビ部分を「ジングーべー，ジングーべー，シノオドレ」と歌い，それを英語の歌詞だと思い込んでいたとのことである。「ジングルベル，ジングルベル，鈴が鳴る」のところである。私も本来の歌詞はわからないが，「シノオドレ」ではなかったと思う。
　この「シノオドレ」は私に「死の踊り」という言葉を連想させ，ベルリン某所の礼拝堂の壁画を思い出させるのである。骸骨と農民が交互に手をつなぎ踊る，あれである。あんまり気持ちのいいものではない。
　何故，彼女がそういう思い込みをしたのかは依然不明であるが，クリスマスが近くなると，彼女の歌う「ジングル・ベル」を彼女の笑顔とともに思い出すのである。
　ここに彼女が歌ってくれた全文を紹介しておこう。私の記憶が正しければ，以下のようであった。

ジングーべー　ジングーべー　シノオドレ
　(ジングルベル，ジングルベル，鈴が鳴る)
オワカレ　レストーラディル　ラホソフセ　ヘイ！
　(今日は楽しいクリスマス　ヘイ)