でか腹ご披露ツアー
－妊娠７ヶ月　その２－

　定期検診の翌日。久しぶりに実家に顔を出す。ちょっとした旅行気分だ。東京駅で乗り換えのついでに大丸の食品売り場でお弁当と購入。手土産も買って，新幹線に乗り込む。お正月は妊娠初期だったから，だんなさんの両親とこにも，むるっちの両親とこにも帰省できなかったの。だから本当に久しぶり。

　新幹線の中でトイレに行った。最近急にお腹がせり出したせいで，バランスが取り難いのに，新幹線って揺れるでしょ？　もう恐い，恐い。おまけに新幹線のトイレって，和式中心。しゃがむのが大変。あぁ，こんなにお腹がでかかったのねって実感した。近頃ってどこの家も洋式便器でしょ？　むるっちが母親のお腹にいた頃って和式中心だったんだよね？　大変だったんだろうなぁ。

　今回の帰省は，両親に「でっかいお腹」を見せるためと「入院用品＆新生児用品」を揃えてもらうためだったの。ベビーバスや哺乳瓶は知り合いに譲ってもらえるし，ベッドはレンタルの予定だから，衣料品中心のお買い物。

　紙おむつって可燃ごみじゃないんだよね。だから，むるっちはなるべく使いたくない（旅行とかの間はしかたがないけどね）。よって布おむつを用意。しかぁし，むるっちは小学生のときから高校卒業まで「家庭科３（５段階評価）」だった女。裁縫の宿題はお母さまに頼んだ女。当然今回もお願いしました。母親が裁縫できるって有り難い。むるっちも母親になるのにどうするんだ！って声もあるんだけど，この際無視を決め込んでっと。10組は母の手縫いで，20組は既製品（もう縫ってある）を購入。おむつカバーも３枚購入。今年の長期予報では，梅雨の後半（６月末～）の方が雨が多いってことになってる。さて。これで足りるのか？

　それと夏用の薄いベビードレスを２枚，肌着６枚，手袋２組，ガーゼはんかち（大）３枚・（小）10枚，哺乳瓶，それにむるっちの入院用品で，しめて５万円。しぇ～～～～～～。ぽこさんは夏生れだから，まだ衣料品が少なくて済むんだよ。冬生れの場合，この他にもいくつか必要だし，衣類だって乾き難い。ぽこさんは我が家の経済状況をよく把握してらっしゃるわ。何ていっても，ボーナス月生れだもんね。えらいえらい。

　むるっち宅の家族計画では，今年ぽこさん，２年後にぽこさん２号，更に２年後にぽこさん３号...と３人家族が増える予定。なんとか元は取れるかな？　ま，とりあえず，ひとりめを産んでからの話なんだけど。

　で，こういう新生児の衣料品を全て，お湯で煮て，それから洗濯して，アイロン掛けて（殺菌の意味もあるんだってさ），ぽこさんを迎える用意完了になるらしい。赤ちゃんって一手間も二手間も掛かるのね。先は長いわ。

　でね，本当に小さいの。肌着なんか，おもちゃみたい。新生児は50cm・３kgっていうのは両親学級で習ったし，実物大の人形も抱いてみた。でも実感ってほとんどなかった。今はね，ぽこさんの肌着やおむつを畳みながら「あぁ，本当にちっこい奴がやってくるんだな」って思える。不思議だね。
　春，まだ寒い時期に，ひとつだけで咲いてるたんぽぽとか見つけて，心がほわってする感じ...そう，そんな嬉しいような，楽しいような，ちょっと感動しちゃうような。でも感動してる自分にちょっと照れが残っちゃう，そういう感じになる。

　それから，今回の帰省で気が付いたこと。それは「元妊婦」と「未経験者」の違い。

　むるっちの友だちや従姉妹は皆，「未経験者」。だから半分くらいの人がこわごわお腹を眺めて，残りが「触ってもいい？」と人差し指を伸ばしてくる。もろ「未知との遭遇」って感じでしょ？
　笑っちゃうのは「ねぇ，ちょっと歩いてみて」って言われたこと。妊婦だからって，足までお腹になっちゃう訳じゃないのにねぇ。

　一方「元妊婦」，つまり母親やおばさん達の反応。これがみんな同じ。
　「どう？」って言いながら，お腹に向かって掌を差し出してくる。で，こう何ていうか柔らかく「さわさわ」ってしてみるの。感触を懐かしんでいるような，むるっちのお腹を触りながら昔を思い出しているような，温かい触り方なの。（あぁ，この人たちはここにいるのがぽこさんだって判っているんだろうなぁ）っていう感じがした。

　それで思い出したの。だんなさんのお母さんが「写真見せてね」って言ってたこと。本当は触りたいんだろうなって，ようやく分かった。たぶん自分の娘なら何の遠慮もなく，一度くらい触らせてって言ったのだろうけど。たまたますごく離れて暮しているし，むるっちは切迫早産だったから飛行機に乗るのは無理だと思ってるんだろうなって。
　妊娠がわかったときから，４人のプレ爺・プレ婆（初孫になるのよね）達は，ぽこさんにめろめろになりそうな気配があったもん。そう思ったら「せつない」気持ちになっちゃうよね。「でか腹ご披露帰省ツアー」したくなっちゃった。

　で，思い立ったらじっとしていられないむるっちは心配症のだんなさんを説き伏せて，だんなさんの両親の迷惑も顧みず「でか腹ご披露帰省ツアー」を，その翌日には組んでしまったのだった。日程？　そんなの，思い立ったら「すぐ」に決まってるじゃない。二泊三日でね。

　結論としてはだんなさんの両親にも，特にお母さんに，見てもらってよかったって思った。自己満足だとは思うけど。もちろん，ぽこさんにも「お父さん自慢の里」を見せておきたかったのだけど，はて，見えたでしょうか？

　胎動。日増しに強くなってる。お腹だけ武者震いしている，とでも言えば分かってもらえるかな？　うーーん，無理かな？　じゃ，「ぽこさんを震源地とする有感地震」なら分かる？　とにかく，お腹を中心に震度がパーツによって違うのよ。手とかに影響はないけど，足の付け根・胸なんかはちょっとぷるってくる感じ。お腹自体はもう勝手に波打ってる。ぶるるんっ，たふんって。これじゃ，怪獣の卵なんてもんじゃないよね。水風船？？

　最近，暇なときはお腹をさすりながら，その波を眺めてる。面白いよ。できればだんなさんにも見せてあげたいのだけど，だんなさんがじーっと見てたり，ぽこさんに話し掛けたりしてるときは，あんまり派手に動かないの。変でしょ？　照れるのかしら？