予防接種みたいなもん
－妊娠10ヶ月 その１－
いよいよ最後の月になっちゃったよぉ。10ヶ月。もう後は産むしかないのねって，つくづく思う。もちろん，出産に対しての不安は日増しに大きくなっていくし，実際ぽこさんがお腹から出てきて生活するとなると大変だろうと思う。楽しみではあるんだけど。
こうやって不安がつのるとね，小学生の頃の「予防接種」を思い出すの。
「痛い」ことなんて分かってるんだけど，それでもどの程度かっていう情報が欲しくて，自分を安心させたくて「痛い？ 痛い？」って，保健室から出てくるクラスメートに尋ねる。でも，いざ自分が友だちに聞かれると，いじわるにも「相当痛いよぉ」なんて脅しをかけちゃう。もちろん，友だちにもいじわる言われてのことなんだけどさ。
なんかね，出産についてもそうみたい。
「生まれてからが大変よぉ」
「生まれるまでに丸一日かかるんだから」等など
あまりいじわるしないで欲しいなぁ，と最近ちょっと気弱になってる。
予防接種なら一瞬だけど，出産ってそうじゃないし，子育てなんてもっと長いでしょ？ おまけに「初体験」だもん。雑誌読んだって，保健テキスト読んだって分かりゃしない。「百聞は一見に如かず」ってことでしょ？ あぁ。ため息が出ちゃう。
10ヶ月に入ってすぐ，またこれもマニュアル（？）通りなんだけど，ついに手足がむくんで来ちゃった。
「あぁ，妊娠線が入ってるぅぅぅぅ」と気がついた晩，手足がむくんで，だるくて寝られない。体重も増えてた。どうして？ 食生活は変ってないし，散歩だってしてる。今までと何も変ってないのに，いきなりの体重増加，そしてむくみ。足の裏には，むるっち御用達「サロンパス30」と一枚ずつ。そのスーっとした感覚で，自分を誤魔化して眠りにつく。でも熟睡には程遠く，２時間おきくらいに目が覚める。
もちろん噂には聞いてた。
「出産がどんなに恐い，とか思っててても，大丈夫，絶対産みたくなるから。ほーんとだってば」
これですね。きっと。うん。こんなに「むくみ」がひどくなるなんて思っても見なかったもんね。おまけに「仰向け」で寝ることも辛くなってしまって・・・。なんて言うのかな。要するに重みを感じるようになっちゃったの。本当に重い。絶えず寝返りをうたなくちゃ，寝てられない。ところが，そう簡単には寝返りが打てない。例えば，よいしょっと寝返りをうつでしょ？ 身体が横を向く前に，お腹が先に寝返りをうっちゃうのよ。袋に入れたスイカとかをぶんぶん振り回すと，自分が止まったときに遠心力で引っ張られちゃって，すぐには止まれないでしょ？ あんな感じ。身体がお腹に引っ張られてる。
こんな風になるなんて，ほんとに驚き。
さて。そんな体調不良を他所に，むるっちはだんなさんに頼んで，部屋の模様替えを断行。もうそろそろ「正産期（妊娠37～42週のこと。これ以前に生まれると早産，以降だと過産という）」だから，多少重いもの持っても大丈夫かなって思ったしね。（でも，家具や本，全てだんなさんが動かしてしまって，むるっちは見ているだけだったの。重いものなんて持つ隙すらなかった。）
むるっちは「ぽこさんのベッド」のある部屋にパソコンと電話を置きたくなかったから。今まで気がつかなかったんだけど，だんなさんは夜中の１時過ぎまでパソコンをいじるのは当たり前で，週末なんか朝までいじってる（ま，仕事なんだけど）。ただでさえ，生活のリズムのない新生児なのに，平日と週末と消灯の時間が違うのは気の毒だし，むるっちもきっと辛いもん。
それで，だんなさんをダイニングに追い出してしまった。ま，その分だけ寝室も広くなったし，だんなさんにもむるっちにも，満足のいく模様替えになった。
意外だったのは，ダイニングにパソコンを移動してからの方が，風通しが良くなったってこと。これから夏だもんね。
夏・・・といえば，今年は「梅雨が長くて，しかも冷夏」という長期予報が出てるみたい。おむつ，乾くかなぁ？ 大丈夫かなぁ？ 暑いのも嫌だけど，冷夏で寒いってのも，ちょっとご遠慮申し上げたい。
そんなこんなで，ついに10ヶ月最初の検診。これからは毎週なんだよね。お金が続くかしら？ ま，それはともかく，先回と同様，徒歩でお出掛け。今回はあらかじめ地図で近道をチェックして行った。先回はバス路線を辿って行って約50分。今回の近道，なんと30分。あぁ，こんなことなら，もっと早くから徒歩で通えば良かったのにぃ。バス代，もったいなかったなぁ。
で，だんなさんとお散歩がてら，てこてこ歩いて産婦人科へ到着。いつもの検査をこなして，エコーのための診察台へ。これまた，形式美となった「むるっちさん，うち，どこだっけ？」に始まる奇妙な問答が繰り広げられたのさ。もう，楽しみになっちゃってるんだもん。ぽこさんも私も順調で，何も問題がないから，こんなにのんきな会話が出来るんだろうなって思うしね。
でも，今回初めて！っていう話題が出たのよ。
「だんなさんは出身どこ？？」
だんなさんは島根の某観光地，山陰の小京都出身。そう告げると先生が「いいとこじゃん。こっちは就職で来たの？」とかって話が盛り上がっていく・・・結局エコー検査してる間中，ずっとお話してたもん。
ただね，不思議だったのは，先生が殆ど毎回，むるっちの職業を尋ねるのね。なんでかなって思ってたら，今回，ついに「中学の国語の先生してたんじゃないの？」って言われちゃったぁ。妊娠してからメガネを掛けてる（それまではコンタクトだったのさ）から，そう見えるみたい。真面目そうなのかなぁ？ こんないいかげんな妊婦って居ないと自認してたんだけど。
「自分ひとりで計画出産」の話を聞いたの。里帰りで立ち会い分娩って，だんなさんの仕事の関係もあってなかなか難しいと思うよね。ところが，彼女は予定日にだんなさんが来るって分かってたから，その二日前に「出産するための体操」を始めたんだって。そしたら，だんなさんが到着した日に出産。見事・・・
「出産するための体操」なんて聞いたことないから，その彼女に聞いてみたの。そしたら，なんとも単純な体操なんだけど「柱をつかんで，ヒンズースクワットみたいに屈伸する」だけなんだって。40週過ぎたら，こういう体操をするものらしい。いろいろ勉強になるなぁ。
むるっちは・・・と言えば，先生に「もう，いつ産んでもいいよ」って言われてから，多少重い荷物も平気で持つようになった。だって，重いもの持っても，生まれちゃうだけだもん。もちろん，だんなさんに見つかると，相当怒られる。けど，もう正産期だしね。そう思うと気が楽。いままでは「あれはやばい」「これはやばい」って自分の動きをセーブしてたけど，もうそんな必要はないし，むしろ動かないと産道が柔らかくならないみたいだもん。