小結の考え事
－妊娠８ヶ月 その３－

　あぁ，飽きてきた。本当に飽きてきた。何も進展がない。面白くない。妊婦っていう状態に慣れてきたってこともあるんだろうけど・・・それにしても面白くない。
　もちろんぽこさんは毎日着実に成長してるみたいで，胎動が強くなったり，今までにないパターンを編み出したりしてくれてるんだけど，それだけじゃね。検診に行っても，特に新しいこともないしね。ま，それは順調ってことなんだけど。こう，何か・・・ねぇ。

　早く生まれてこないかなぁって思う。でも早産じゃ困っちゃうしさ。
　ぽこさんに会いたいなって思う。それはだんなさんも同じみたい。

　最近だんなさんがあまり胎動に興味を示さなくなってるのが悔しくて，無理矢理だんなさんの手をお腹にくっつけて「ぽこさん，お父さんに威力をみせてやれー」とかってけしかけてるの。たまにタイミング良く「ぼんぼこ」って動いてくれるんだけど，そういうときは「聞こえたのかな？」って嬉しくなる。もちろんだんなさんの反応もなかなか楽しい。「うぉぉぉ，激しい」とか言ってるもん。

　「どう，最近？　お腹大きくなった？」って聞かれるたびに「今，小結くらい」って答えることにしてる。臨月が横綱クラスなら，そんなもんじゃないかなぁ？

　でも，これだけ大きくなってるのに，ふっと妊娠していることを忘れちゃうことがあるの。胎動がなくて他のことに集中してた(読書，とか)時に，トイレに行ったり，お風呂に入ったりすると，自分のお腹見て「ぎょっ」とするね。そういう時は，やっぱり妊婦って異形だと思ったりする。特に側面を鏡で見ると，お腹だけぽんぽこぽーんって出てるもん。だからうつ伏せにはなれないんだよね。

　でもこの前，ちょっとした出来心で「うつ伏せにトライ」してみた。
　だめだったよ。さぁ，腕立て伏せしますよーって体勢で，既にお腹が布団にくっ付いてる。まるで「太っちょワニ」。頭の中で「お臍を支点にシーソーしてるむるっち」の姿が見えて。ちょっと哀しくなった。

　だいたい正座してても，胡座を組んでても，いつも太股には「お腹の感触」がある。体育座りなんて絶対出来ないね。
　妊娠して出来なくなったことって，気がつかないだけで，結構多いみたい。「走れない」「転べない」なんてあたりまえ。化粧もできない(あの独特の匂いに負けちゃう日があるのよね)し，ミニスカート・ハイヒールもだめ。でも，もう数週間の辛抱さっ。

　それとは別に，困ったことがあるの。ぽこさんが生まれてからのこと。子育てに不安があるのではなくて，「第１子だから」という一連の行事のこと。狭い２ＤＫに住んでるのに，「初節句」とか言って何やらでかいものをもらっても困るでしょ？　孫がかわいいって気持ちは分かるけど，生活必需品以外ってもらいたくないなぁ。考え方が貧乏くさいかなぁ？
　でも，こういうのって「気持ち」って奴が絡むから断り難いよね。

　で，まぁこの一連の行事って，実はたくさんあるみたい。「お七夜」「お宮参り」「お食い初め」「初節句」などなど。地方にもよるのだろうけど，むるっちにしてみれば「やめてくれぇ」の世界。ぽこさんが３ヶ月くらいになったら，だんなさんの実家に「お宮参り」を口実に里帰りするつもり。それ以外の予定は入れたくない。理由は簡単。むるっちの体力不足。それから「子どもに対する不公平は止めたい」ってこと。これから何人生まれるか，まだ分からないけど，それぞれの子どもに同じ事をしてあげたい。最初の子っていうだけで周りのリアクションが大きいでしょ？　だから今回は少しセーブしたいの。
　これって，むるっちのわがままかなぁ？

　むるっちとだんなさんの基本方針は「自分たちの価値観での子育て」なの。世間という物差しや，他の人の価値観では育てたくない。もちろん早期教育なんてもってのほか。それよりも大切なことってたくさんあるもん。偏差値なんかより，生活能力の方がずっと大事。そうでしょ？　学校の成績がすっごく良くても，実際は生活していけない人って結構いると思うよ。
　だからこそ，自分たちで納得のいくようにぽこさんの成長を「見て」いきたい。難しいんだろうなと思うけど，そうしたい。ぽこさんのおじいちゃん・おばあちゃんに理解してもらえるといいなぁ。
　でも最近は「孫に好かれたい」ために，教育や躾には一切口を出さず，プレゼント攻勢をかけるタイプが増えてるみたい。それは同居，別居を問わずらしいのね。ぽこさんの祖父母が，そういうタイプじゃないことを祈りつつ・・・