踊るぽこさん
－妊娠６ヶ月　その３－

　久しぶりにＣＤ屋さんへ出掛けた。ＣＤとか本の売り場って，細かい字がちらちらして気分が悪くなるから避けていたんだけど，ほんとに久しぶりに覗いてみた。だんなさんが見つけたのは"ANIMETAL"のシングル２枚...買ってしまった。
　家に帰ってすぐ大音量で聞いてみた。うーん，はまる。もともと男の子向けのテレビまんがって好きだったんだけど。テンポやコードなんかがそのままなのに違和感がない。そうか！『デビルマン』の主題歌はメタルだったのか!!　歌詞も「悪魔」とか出てくるもんね。

　で，まぁ，それはそれでいいのだけど，困ったことがひとつ。ぽこさんの反応が激しいのよ。今までになく「ぼこぼこ，がずがす」って動き回るの。今までは「動く」感じだったのが「動き回る」ようになったってこと。果たして，成長したからなのか，メタルが好きなのか...うーん，胎教にメタルは激しすぎるか？　ちょうど第23週に入る頃でしょ。胎児は第24週までには聴覚が備わるんだそうだ。聴覚が備わって，最初の音がメタル?!　やばいかもしれない。まだ「懐かしのテレビまんが主題歌」の方がいいかなぁ？　面白いのは「ジャングル黒べえ」（ちなみにこれはむるっちの好み)や「魔女っ子メグちゃん」(ちなみにこれはだんなさんの好み）には反応するのに「山ねずみロッキーチャック」（むるっちとだんなさんの好みなのにね）には反応しないの。どうも好き嫌いがあるみたいで，曲によって「うねうね」したりしなかったりする。第６月の胎児にも好みがあるのかなぁ？　ちなみに"80's ALIVE"のＣＤには無反応なんだな，これが。

　胎動に力強さが加わってる。それは判る。でも本当に音楽(いや，メタルだったけど)に反応してるんだろうか？　なんか不安が残るなぁ。むるっちもあんまり話し掛けないもんね。やっぱりこっぱずかしさが抜けなくてね。で，苦肉の策。歌を歌うの。しかも即興のでたらめ。「ぽっこさーん，かわいいねー♪」とか「きょーおのばんごはんは何にするかねー♪」とかなんとか。これでむるっちの声って覚えてもらえるかな？

　胎児って生まれる前から「人の声をよく聞こう」って努力するんだって。だから話し掛けると胎動がぴたっと止まったりするみたい。むるっちが話し掛けると胎動が止まっちゃうのはそのせいかな？　それとも姿勢の問題かな？　何ていっても，相手は自分のお腹の中だもんね，猫背になっちゃう。猫背ってちょっと息苦しいんだよね。膨張したお腹と胸に内臓が挟まれちゃう感じがするの。
　だんなさんは相変わらず一日に一度くらいは，お腹に口をくっつけて「ぽこさん，ぽーこさん」って呼んでる。

　最近，韓国の友だちと頻繁にＦＡＸで手紙のやり取りをしてる。もともと英語は得意じゃない。むるっちの英語では，日常や恋愛の話は出来ても，政治経済の話なんて全く出来ない。それなのに，ここへ来てもっと困ったことが...そう。日常の話すら英語で出来ない。なぜか？？　それは簡単。切迫流産，胎動，産褥，胎児...英語に出来る？　単にボキャブラリー不足の問題かなぁ？　今まで使っていた和英辞典がここで一気に「役立たず化」してる。
　ま，胎児については「ぽこさん」という固有名詞を使うことでクリアーしてるんだけどね。それにしても，「お腹の子」って専門用語(胎児)じゃなくて，普通はなんていうのかなぁ？

　そうそう。妊婦の性欲。つわりが治まってすぐの一時期はＨな気分がむくむくしてたけど，最近は全然ない。キスしてて気分が盛り上がって来ても，ぽこさんがむくって動いた瞬間に「さーっ」って引いちゃう。だんなさんに悪いなって思うけど，しょうがないよねぇ。でもね，ときどき「こいつ（ぽこさん）ってわざと邪魔してない？」ってタイミングのときもあるの。本当はどうなんだろう？
　妊婦さんも千差万別・百人百様だから，こういうのって人によるらしい。この時期がすごく感じるんだって主張する人もいる。不思議だね。結局のところ，何から何まで全部が「個人差」なのね。