クリスマス

　「ねぇ、お母さん。クリスマスって、誰のお誕生日なの？　なこちゃんの？　しょうちゃんの？」なこが問う。

　クリスマスが誰かのお誕生日ってことは知ってるのね。じゃ、ついでだから、ちゃんと教えておこうと思ったむるっちは、こう答えた。「クリスマスはね。キリストさんっていう偉いおじさんのお誕生日なんだよ...」でも、なことの会話がかみ合わない。

　よくよく話を聞いてみると、なこの理屈はこうだった。
　・クリスマスパーティーには「丸い、大きい、いちごの載ったケーキ」を食べた。
　・そのケーキにはろうそくがあった。なことしょうが消した。
　・パーティーのときには、おばさんやお姉ちゃんがいいものをくれた。
　・朝起きたらプレゼントが置いてあった。
　・だから、なこちゃんかしょうちゃんの誕生日。
　・でも、なこの誕生日は暑くなってから、しょうの誕生日は雪が降ってから。
　・じゃ、誰の誕生日？
とまぁ、そういうことらしい。

　さらには、なんでおじさんの誕生日になこちゃんとしょうちゃんがプレゼントをもらえるのか、なんでそのプレゼントをサンタさん（むるっちも人並みに枕もとにプレゼントを置いてみた）が夜中に持ってくるのか、なんで宅急便屋さんに頼まないのか、もう全然理解できないらしい。

　あのね、クリスマスのプレゼントはね、ルドルフっていう赤い鼻のトナカイ...そう、東山動物園で、おじいちゃんと見たでしょ、あれがサンタさんの橇を引いて空を飛ぶの、それで「いい子」のとこへプレゼントを持ってくるの。サンタさんは自分でいい子を確認して配るから宅急便のおじさんには頼まないの。サンタさんは忙しいから、なこのプレゼントは夜になっちゃったの。ケーキはキリストさんっていう偉いおじさんのお誕生日だから買ったの。なこも食べたかったでしょ？

　苦し紛れに説明していて、自分でも情けなくなってくる。でも一向に理解しないなこは「じゃぁ、誰の誕生日なの？」を連発する。キリストが生まれたところから話をし直そうかと思った矢先。

　「そうか。お母さん、じゃ、あれは、なことしょうの、クリスマスなのね」

そうそう。クリスマスなの。なこやしょうとお誕生日とは無関係なのよ。これで理解してもらえたと思ったむるっちが甘かった。

　つい先日のしょうの誕生日。バースデーケーキを用意して、ろうそくを灯すと...

　「今日は誰のクリスマスなの？」