ワニみたい

ＧＷ中だと言うのに，肌寒い夕方。むるっちとなこは，二人でガーデニング。 なこは向日葵の種を埋め，むるっちは花の苗を植えるつもり。まず，花の落ちたチューリップやヒヤシンスをどかして，花壇を整理。植えた覚えがないのに，毎年あちこちから姿を見せるノースポールを花壇に植え替え，ついでに草を取り・・・なんて。土いじりは始めると止まらない。

そんなこんなで寒さに震えながら花壇を整理するむるっちを尻目に，なこはままごとを始めていた。ま，そんなもんよ。戦力にはならないさっ。

ひとりで背中を丸めながら，苗を植えようとシャベルで花壇の土をやわらかくほぐそうと，ぐっと掘り返したとき，土の中に鮮やかな茶色の縦縞の細長い生き物がトグロを巻いているのが見えた。（へび？　冬眠？）なんて思ってしばし眺めていると，それがむくっと起きたと思うと手足をもぞもぞ動かして穴から這い出てきたのだ。

「ぎゃっ！」（短いが鋭いむるっちの悲鳴）

その声でなこが振り向き「おかあさん，どうしたの？　何かいた？」と尋ねる。手にはままごとに使っていた鍋を握り締めている。（おめーもびびってるな）

「蛇だと思ったら，違うの（とかげ？）が出てきて・・・お母さんビックリしちゃったの。あー，驚いた」
「何？（遠目から覗いて）うっわぁ・・・ワニみたいだね。おかーさん」

ワニ・・・ねぇ。あんなの花壇から出てきたらビックリするどころか，食べられちゃうんじゃない？という言葉を飲み込んで，むるっちは作業を続けたのだった。いやぁ，それにしても驚いた。