生き返る

ある日。白雪姫のビデオを観ていたなこが言った。「白雪姫って，何で治ったの？」

彼女の意図は，つまり，一度死んだはずの白雪姫が王子様のお別れのキスで生き返るのはどうしてか？ということ。だからむるっちは答えた。「白雪姫の喉に詰まった毒りんごが外れたからだよ。本当は死んでなかったの。死んでるように見えただけだよ」

（本当は「仮死状態」とでも言いたいとこだけど，４歳児にはそれは無理でしょう？　だから，そう答えた。死んだ人が生き返るなんてファンタジーだよ。さもなくば，ゾンビ？キョンシーの類だよ。）

「ふーん」

すごく不満そうななこ。もう一度最初からビデオを観るという。 白雪姫の臨終のシーン。画面を食い入るように見つめるなこ。それをぼーっと眺めるむるっち。いきなり，なこが叫んだ。

「おかーさん，巻き戻して。今のとこだけ，巻き戻してよ。ほら，ほらね。"魔法の力で"で言ったよ。やっぱり死んでたけど，魔法で治ったんだよ。」

確かにナレーションはそう言っている。なこは・・・かなり喜んでいる。 もともとファンタジーの世界に住んでいる「なこちゃん」の言動は，魔法かかっていることが多いのに，これ以上魔法だの，魔力だのじゃ，お母さんは困る！

「ピーリカピリララ。おかーさん，お部屋を片付けて！」
「しょうちゃんのけが，とんでけー。ざまらまるー」

これじゃ，困るのよ。ほんと。「お部屋，勝手にきれいになって」という呪文を聞くのと「片付けて」というのでは，私にとっては大きな違いだ。なこがぶつかったんだから，「しょうちゃんのけが，とんでけー」という前に「ごめんなさい」でしょ？

魔法の試験に受かれば魔法使いになれる。魔法でなんでもできる。そう思うのはいいんだけど。ただ，むるっちとしては「人を使役する魔法の使い方」とか「自分のミスをないことにしちゃう魔法の使い方」ましてや「人を生き返らす魔法」には，どうしても抵抗を感じるよ。

だから，公園のヘビのミイラもわざわざ見たんだけどねぇ。何日経っても「生き返らないでしょ？」って。

子供のビデオとはいえ，ナレーションにも，もうちょっと気を使ってほしいなぁ。原作はどうなんだろうねぇ？