レトリックな感覚

子供ってボキャブラリーが少ないせいか，「詩人」みたいに見えることがある。

先日，天候の安定しない曇天の日に，公園までしょうと二人で出掛けた。珍しく誰もいない。ざわざわと風が吹き，桜の枝が重そうに鈍く揺れる。しょうはブランコに一人で乗っていた。すると突然しょうが言った。

「おかーさん，葉っぱがねー，おばけになってるよ」

生暖かい，いやぁな感じの風（夕立が降る前のような風だけど，まだ空は中途半端に明るい）が吹くのを感じていたので，ぞぉーっとした。しょうのブランコの横に立ち，木々を見上げると，重そうな桜の枝がゆさゆさ揺れて，その緑の葉っぱが折り重なり，まるでおばけの手が招いているように見えたのだ。しょうに「おばけの手みたい？」と確認すると「おいで，おいでみたいだね」と笑った。

そういえば，ずっと前，なこがまだ２歳の頃，そういうレトリックの話をだんなさんとしたことがある。

なこは，そのときパンを食べていた。かぶりつくだけでなく，手でちぎることができるようになっていた。ふたつにちぎったパンを見て，彼女は「くもになっちゃった」と言った。パンのちぎれた端は，ふわふわって言うか，ぎざぎざって言うか，本当に雲みたいだもんなぁって思った記憶がある。

他にもいろいろ言うのだけど，ひとつひとつは覚えていられない。ただ，知ってる語彙全てを駆使して表現すると，そういうレトリック（修辞）になっちゃうのだろうなぁって思うのだ。子供は詩人みたいだけど，詩人でもなんでもなくて，本当はただ一生懸命おしゃべりしているだけなんだろうなぁと思うのだ。