貧乏と贅沢

むるっちは絵本を朗読するのが、あまり好きじゃない。だって、途中で変な合いの手入れられたり、質問攻めにあったりで物語を楽しんだりできないし、第一、この時期のおこちゃまの読むものって・・・短すぎるのよ。

ともかく。その日。むるっちは「かさじぞう」を朗読させられていた。

「むかし昔、あるところにおじいさんとおばあさんがいました。おじいさんとおばあさんはとてもまずしかったので、大晦日だと言うのに、お正月の準備ができません・・・」

すると、なこが「ねぇ、まずしいって何？」という。「貧乏のこと」と、むるっちが素っ気無く答える。

「なーんだ、お母さんと一緒じゃん！」

そうだよ。悪かったね。

また、ある日。むるっちが台所で夕食を作っていると、しょうがゴミを捨てにきた。しかも鼻歌を歌っている。機嫌がいいのかなぁ・・・なんと思いながら耳を澄ますと。

「じぇーたく、じぇーたく、じぇーたく♪」

はいっ？　それはもしかして「贅沢」のことかな？　でも、まさかそんな単語は知らないだろうと思って知らん振りを決め込んだ。

すると、その翌々日。スーパーで買い物の途中、なこが「ジュース買ってぇ、パンも買ってぇ」とぐずぐず言い出した。いやだなぁ、でもひとつしか買わない約束だから、と攻防戦を繰り広げるむるっちを横目に、しょうが機嫌よく歌を歌いだした。

「じぇーたく、じぇーたく、じぇーたっくもん♪」

その言葉・・・知っておられたのですね。