あなたは誰？

なこに向かって「あれ？　これ誰だろう？」と言ってみる。最初は笑ってるんだけど，次第に自分のことを認知してないと思うようで真剣味を帯びてくる。

なこ「ね，ね，なこちゃんでしょ？」
母「あれぇ？　しょうちゃんじゃない？　手も小さいし・・・」
なこ「ちがうよ，なこちゃんだよ。だって小さいけど，ちょっと大きいし」
母「しょうだよ」

ここで，なこの最後の切り札。

「お母さんよく見て。耳の穴が小さいでしょ。だからなこちゃん！」

いつも耳掃除のときに「なこの耳の穴はしょうより小さくて掃除しにくい」と言うところから来ているらしい。「あぁ，そうだったねぇ。ごめん。間違えてたわ」で一段落。なこもほっとした顔をする。最近は慣れてきて「また間違えた。耳の穴を見たら分かるのに」なんてため息混じりに言われる。

しょうにも「あれ？　これ誰だろう？」と言ってみる。でもしょうは最初から最後までにやにやしっぱなし。なこのように真剣にはならない。親がふざけてやってるのを理解してるのか，そんなことは彼にとってどうでもいいのか，それは分からない。でも一応のやり取りはある。

しょう「しょーたんだよ」
母「違うよ。なこでしょ？」
しょう「しょーたん！」

しょうはまだ小さいので，ここで助け舟（？）を出す。

「踊ってくれたら，なこちゃんなのかしょうちゃんなのかよく分かるのに・・・」

すると，いつものステップを踏む。じたばた，どたどた，その場で駆け足しているようにも見えるが，微妙に前後に揺れている，そんな謎のステップ。誰にも真似のできない彼のオリジナル。

「あー，なんだしょうちゃんだったのか」

すると「おかーたん，もいっかい，いって」と言われる。そこでまた「あれ？誰かな？踊ってくれたら分かるのに・・・」と応じる。しょうはまた，じたばたどたどた踊りだす。 これを延々繰り返す。

自分の仕掛けた罠にはまっていく気がするのはこんなときだよ。