「何飼ってるの？」

電器を消して布団に入った。すると，なこが話し掛けてきた。

「お母さん，お話しようよ。そうするときっと楽しいよ」
「うん，いいよ」

しばらく，とりとめのない話をしていたら，突然なこがむるっちにこう問うた。

「お母さん，何飼ってるの？」

もちろん，うちにはペットらしいものはいない。むるっちが小動物嫌いだからだ。

「何のこと？　お母さん，何も飼ってないよ。シーターはばあちゃんの犬だもん。お母さんちには何にもいないじゃん」
「ちがーうー。その話じゃなくてー，今はお母さんが何を飼ってるのかって話なの。ちゃんとなこのお話聞いてよ。」

何度確かめても同じこと。「何飼ってるの？」の一点張り。もしかして「Ｒくん」のことかな？と尋ねても「その話じゃない」と。仕舞いには泣きが入ってくる。でも，こっちには何のことなのかさっぱり分からない。ついにはマジで泣き出すなこをもてあましてくる。頭に来たむるっちは「何のことか，お母さんには全然分からないよ！」と強く言うと・・・

「お母さん・・・なぁこぉをぉ，かってるんでしょぉ！」と泣き叫ぶ。

（ほへっ？　何でなこを飼うの？）と思うのは，きっと大人の考え。なこは「何も飼ってない」という答えを，「なこはお母さんちの子じゃない」と読んだみたい。そんなこと言われて泣かれても・・・と思う反面，かわいいとこあるじゃんって笑ってしまった。

それから一応，１）お母さんはなこを飼ってる訳ではない，２）飼うのは動物，子供は育てるということ，３）お母さんは「なことしょうを育ててる」ということの３点を説明した。しばらくしゃくり上げてたけど，納得したのか諦めたのか，そのまま寝てしまった。

なんだかなー，もう。こんな面倒なことになるのなら，いっそ「なこを飼ってる」といえばよかったかなぁ。