あ・い・う・え・お

どういう訳か，朝食を食べながら，なこが言う。

「んーーーーと。あっ！　おめめに"お"がつくね」

あー，そうだねぇ。毎朝のことである。当然ながら，むるっちの返事は限りなくいいかげん。なのに，なこの「あ・い・う・え・お」談義は続いている。

「あ，おててにも"お"がつく。おやまにも"お"がつく。それからね・・・」

あぁ，もういいから，ごはん食べなさい。幼稚園遅れるよ。

さて。昼食の時間。なこは幼稚園で給食を食べるので，しょうとむるっちと二人きり。でも，しょうがぼろぼろごはんをこぼし，マシンガンのように話しつづけるので，相変わらず，むるっちの食事はどこに入ったのか，分からない状態。しょうは言う。

「んーーーーと。あっ。おちゃに"ちゃ"がつくよ。お母さん！」

はいはい。これは朝のなこちゃんの真似だな。よく気がついたね，しょうちゃん。

「うん。それでねー，かぼちゃにも"ちゃ"がつくよ。あ，なこちゃにも"ちゃ"がつく。しょうちゃにも"ちゃ"がつくよー」（すごい得意げ）

すごいね，しょうちゃん。

「えーとね」と小首をかしげながら，彼は続ける。

「おうちにはねー。やねがつくよ」

はい？　あんた，いつの間に「ちゃ」談義止めたの？　だいたい，それじゃ，トンチだよ。トンチ。洒落というには無理があるもんなぁ。 でも彼は更に言う。

「そいでねー。きしゃぽっぽにはねー。なこがつくよ」

はぁ・・・申し訳ありません。お母さんは禅問答にはついていけません。