朝食

朝起きる。しょうの第一声。

「しょうちゃんねー，たまごごはん,たべる」

パンにしようかと思っていた朝に限ってそう言われる。ジャムたくさん塗って，ココアも作ろうか・・・などと取引条件を出しても，奴は動じない。

「うーん，じゃねー，たまごとごはんにするわぁ」

おねえ言葉で言われても，それじゃ同じことだよ。
「じゃ，目玉焼きにしようか」と提案すると，今度はなこからクレームがつく。

「なこちゃんねー，こんぶのたまご（むるっちの祖父がオリジナルらしい。溶き卵に塩昆布を混ぜて，そのまま炒り卵にした料理を指す）かぁ，丸い卵がいいなぁ」

この「丸い卵」ってのが大変面倒臭い。出典は「ＮＨＫ今日の料理」で，卵焼きを巻き簾で巻いて丸く成形したものを指している。テレビで見てから，やたらとご所望なさる。今は「お弁当のときだけだよ」とか言ってごまかしてる。でもリクエストはその丸い卵焼きばかり。

「なこちゃん，白いとこと黄色とこが分かれてる卵はいやなの。一緒になってる（混ざっている）のがいいんだもん。目玉焼きはやだよ」

この「目玉焼きはやだ」の一言で，しょうがぐずりだす。

「やだー，しょーちゃん，たがのやき（目玉焼きでも卵焼きでもこう言う）がいいのぉ」

朝っぱらから難儀な奴らじゃ。お母さんは手を抜きたいから，トーストとココアって言ったのに。「もう。分かった。じゃ，こんぶたまごね。それ以外は作らない」と宣言すると，あれほど揉めてた二人が「うん」と返事をし，その上「パンにはジャムともういっこ（マーガリン）のもたくさん塗ってね」「しょーちゃんもぉ」と言う。

一体，何を揉めてたんだか。